メディカルフィットネスとは?
医療費控除や厚労省の認定などのメリット

医療的要素を取り入れたフィットネスである「メディカルフィットネス」は、超高齢社会の日本で大きな注目を集めている仕組みです。また、メディカルフィットネスは医療機関などの事業者にとっても多くのメリットがあります。

しかし、メディカルフィットネスの名前は聞いたことがあっても、実際にどのような運動なのか、開業に必要なことは何なのか、知らない方も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、メディカルフィットネスの基本的な知識や開業メリットなどについてお伝えしていきます。

 メディカルフィットネスとは?

メディカルフィットネスとは?

メディカルフィットネスという言葉は、1980年代に医療機器メーカーによって作られた造語です。メディカルフィットネスがどのような運動であるかの定義については、狭義では「医療機関が運営するフィットネス」、広義では「医療的要素を取り入れたフィットネス」と捉えられることが一般的です。

広義にまで広げると、医療法人・医療機関が運営する施設のみならず、フィットネスクラブ、パーソナルジム、整骨院、治療院などでもメディカルフィットネスを実践することができます。

メディカルフィットネスのサービスの範囲

メディカルフィットネスで提供するサービスは、非常に幅広い範囲に及びます。具体的には、リハビリ、介護ケア・介護予防、生活習慣病改善、メタボ・ロコモ予防、健康維持・増進といった内容から、オリンピック選手のようなアスリートの強化、パフォーマンス向上なども対象です。

また、理学療法士や健康運動指導士などの有資格者から専門的な指導を受けることができる場合があります。

メディカルフィットネスの特徴

メディカルフィットネスは、医療との連携・医療的要素を取り入れた指導が行われることが前提です。利用者の年齢・性別・体組成データ・生活習慣・既往症などの情報をもとに、一人ひとりに適した運動やトレーニングの指導が行われ、利用者に対するサポート体制をしっかりと確保します。

こうした取り組みに対して国は、健康増進のための運動を安全かつ適切に行うことができる施設を、運動型健康増進施設として厚生労働大臣が認定しています。

また、健康型増進施設を取得したのち、一定の条件を満たすことで、運動施設の利用料が医療費の対象となる指定運動療法施設の取得が可能になります。

 メディカルフィットネスのメリット

メディカルフィットネスのメリット

ここからは、利用者・事業者それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

料金を医療費控除の対象にできる場合がある【利用者】

メディカルフィットネスの特徴でも触れたように、健康増進のための運動を安全かつ適切に行うことができる施設を、運動型健康増進施設に認定する仕組みがあります。そのうち一定の条件を満たすと、指定運動療法施設という運動療法を行うのに適した施設として指定されます。

指定運動療法施設では、利用料などが医療費とみなされるため、医療費控除の対象になります。これは利用者にとっての大きなメリットといえるでしょう。

予防から治療まで一貫したケアが実現する【利用者・施設】

健康診断や人間ドックなどのメディカルチェックで異変が早期発見されると、その重症化予防や健康増進の指導に基づいたフィットネスがワンストップで提供されます。

利用者の立場から見ると、医師や看護師、医療設備のサポートを受けられることで、安心して運動を行うことができます。

施設側にとっても、一貫して患者に向き合うことができるため、患者の信頼を得やすくなります。

積極的な広告ができる【施設】

医療法人が医療法42条施設の付帯業務の認可を受けることで、メディカルフィットネスの宣伝広告を行うことができます。積極的なマーケティングを実施することで、他の医療法人と比べて、地域での認知度に差をつけることができる可能性があります。

メディカルジャパンには、リハビリ、介護ケア・予防、生活習慣病改善・予防、健康維持・増進などの製品・サービスが多数出展!

 メディカルフィットネスの施設の種類や認定の基準

メディカルフィットネスの
施設の種類や認定の基準

ここからは、メディカルフィットネスの施設や法律にはどのようなものがあるか、施設の種類や認定の基準について説明していきます。

メディカルフィットネスに関する法律や制度

前の章でも医療法42条施設について触れましたが、更に詳しく説明します。

・運動型健康増進施設認定規程

1988年に厚生労働省昭和63年に国民の健康づくりの推進を目的に、運動型健康増進施設認定規程を策定し、運動型健康運動増進施設として大臣認定を開始しました。

・医療法

1992年に医療法が改正され、医療法人の附帯事業としての運動施設開設が認められました。
医療法42条第4号には、以下のように記述されています。

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疾病予防のために有酸素運動(継続的に酸素を摂取して全身持久力に関する生理機能の維持又は回復のために行う身体の運動をいう。次号において同じ)を行わせる施設であって、診療所が附置され、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置

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サービスを提供している施設の種類

メディカルフィットネスのサービスを提供している施設には複数の種類があります。それぞれの特徴について以下で説明します。

・病院/クリニック

医療法第42条に基づき、医療機関の附帯事業として運営されています。病気の予防から患者と関わることで、地域医療に貢献できる範囲が広がります。また、高血圧、高脂血症、糖尿病が主病の場合、生活習慣病指導管理料を算定できます。またフィットネスジムの利用料などの収入も見込めます。

・介護施設/介護関連事業者

介護施設がメディカルフィットネスを提供することで、入居者の健康寿命の延伸という課題に向かい合うことができます。施設側のメリットとしては、競合介護施設と差別化を行うことで経営上のメリットも期待できます。

・接骨院/治療院など

接骨院・治療院がメディカルフィットネスを提供する場合、普段の施術と介護予防運動などの相性が良いことから、運動の意義を明確に伝えられる可能性があります。施術技術などを活用して安定した顧客獲得ができることも見込まれます。

・自治体

自治体がメディカルフィットネスを提供する場合、地域の健康課題解決に貢献することが重要です。そのためには、地域資源の活用、地域健康維持増進事業などとの連携を図ることも必要です。

国が認定する施設とその認定基準

国が認定する施設と、その認定基準について説明します。

・運動健康増進施設

メディカルフィットネスに関する法律や制度の項目で紹介した運動健康増進施設は、以下が認定条件です。

1.     有酸素運動及び筋力強化運動等の補強運動が安全に行える設備の配置(トレーニングジム、運動フロア、プールの全部又は一部と付帯設備)

2.     体力測定、運動プログラム提供及び応急処置のための設備の配置

3.     生活指導を行うための設備を備えていること

4.     健康運動指導士及びその他運動指導者等の配置

5.     医療機関と適切な提携関係を有していること

6.     継続的利用者に対する指導を適切に行っていること(健康状態の把握・体力測定運動プログラム)

・指定運動療法施設

厚生労働大臣認定健康増進施設のうち、運動療法を行うのに適した施設のことです。この指定を受けた施設の利用者は利用料が医療費控除の対象となります。指定条件は以下の通りです。

1.     厚生労働大臣認定 健康増進施設であること

2.     提携医療機関担当医が日本医師会認定 健康スポーツ医であること

3.     健康運動実践指導者が配置されていること

4.     運動療法の実施にかかる料金体系を設定してあること(1回あたり10,000円以内 ※2022年4月1日より改定)

・医療法42条施設

医療法42条施設(疾病予防運動施設)は、「疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設であり、診療所が附置されているもの」と定められています。以下が疾患予防施設の主な認定基準です。

1.     人員基準

(1)健康運動指導士(これに準ずる能力を有する者)の配置

2.     設備基準

(1)トレッドミル、自転車エルゴメーターその他の有酸素運動を行わせるための設備

(2)筋力トレーニングその他の補強運動を行わせるための設備

(3)背筋力計、肺活量測定用具その他の体力を測定するための機器

(4)最大酸素摂取量を測定するための機器

(5)応急の手当を行うための設備有酸素運動を行わせるための設備

3.     運営基準

(1)生活習慣病その他の疾病にかかっている者及び血圧の高い者、高齢者その他の疾病予防の必要性が高い者に対し、適切な保健指導及び運動指導を行う施設として運営されること

(2)附置される診療所は、施設の利用者に対する医学的な管理を適切に行えるよう運営されること

(3)会員等の施設の継続的な利用者に対して健康診断、保健指導及び運動指導を実施すること

(4)会員等の施設の継続的な利用者に対して健康記録カードを作成し、これを適切に保存、管理すること

 メディカルフィットネスを開業・運用する上での注意点

メディカルフィットネスを
開業・運用する上での注意点

メディカルフィットネスを開業・運用する際には、注意しなければならない点がいくつかあります。

厚労省への申請や定款の書き換えなど、手続きが発生する

医療機関がメディカルフィットネスを運営する場合は、医療法42条施設(疾病予防運動施設)として必ず届け出が必要です。医療法42条(医療法第42条 第4号)では、医療機関の付帯業務として疾病予防のための運動施設の運営を認めています。この疾病予防のための運動施設の一種がメディカルフィットネスです。

また、医療機関がメディカルフィットネス施設を開業する場合は、定款変更が必要です。定款変更には都道府県知事の認可を受ける必要があるので、仮申請から本申請を行い認可されるまでに1~3ヶ月程度が必要です。

相談窓口や解説情報が限られる

メディカルフィットネスを提供するためには、フィットネス施設と医療連携の両方の知識が必要です。しかし、初めから両方の知識を持ってスタートするケースは少ないのが現状です。さらに、相談窓口に関する情報も多くありません。

こうした問題を解決するために、メディカルフィットネスの事業を立ち上げるタイミングで、運営母体側の立場で相談できるメディカルフィットネスの専門家のアドバイスを活用することも選択肢の1つです。

フィットネスやマーケティングのリソースを確保する必要がある

フィットネスやマーケティングの
リソースを確保する必要がある

メディカルフィットネスにマッチしたリソースの確保も必要です。フィットネス施設として設備や動線の確保、マシンの配置、運営オペレーションの整備が必要になるほか、メディカルフィットネスとしての医療連携スキーム、プログラム作成も欠かせません。また、フィットネススタジオ専用の人材やマーケティング人材を採用する必要も出てくるでしょう。

 まとめ

まとめ

メディカルフィットネスは、健康寿命の延伸が期待されるだけでなく、利用料金が医療費控除の対象になる場合があり、医療機関と連携したサポートを受けることができるといったメリットがあります。また施設側にとっても、フィットネスジムの会費による収益や、積極的な広告ができるといったメリットがあります。

超高齢社会の日本で、健康で生き生きとした地域社会を実現するために、メディカルフィットネスはこれからますます必要とされるでしょう。

監修医師のコメント

メディカルフィットネスは法律の改正によって健康保険が一部使用可能になったこともあり、都市部を中心に拡大をしています。従来であれば老化による体力低下を防ぐために利用している人が中心でしたが、近年では健康増進のために利用する人も増加しており、ニーズは非常に多いものです。一般のフィットネスクラブに比較して医師やその他専門職がサポートするという特性は非常に魅力的な広告となり、利用者の増加を見込むこともできるでしょう。

メディカルジャパンには、リハビリ、介護ケア・予防、生活習慣病改善・予防、健康維持・増進などの製品・サービスが多数出展!

監修者情報

監修:郷 正憲

【経歴】
2011年3月香川大学医学部医学科卒。
同年4月より徳島赤十字病院で初期臨床研修、2013年4月からは徳島赤十字病院麻酔科に所属。 保有資格に日本救急医学会ICLSコース認定ディレクター、日本麻酔科学会認定医・専門医

【免許・資格】
日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT

【著書、論文】
看護師と研修医のための全身管理の本

【所属】
徳島赤十字病院

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